手ぬぐいは何百年も前から日本の暮らしの中で使われてきた、木綿製の薄い布。
江戸時代には、巾着と並ぶ必需品として常に持ち歩かれ、おしゃれや粋、そしてその人らしい気風を表す小物としても親しまれていたそう。
拭く、包む、巻く。使い込むほどにやわらかくなり、使う人それぞれの暮らしに馴染んでいく。端が切りっぱなしなのも、乾きやすく衛生的で、いざというときには破いて使うこともできるという昔の人の知恵でした。

静岡・匠宿の染物工房「Washizu.」さんデザイン・構成のもと、歴史博物館店の暖簾として生まれ、昨年特別に仕立てていただいたこの手ぬぐいに使われるのは、お茶づくりの過程で生まれる、商品として使われない茶葉。染めに使われたあとの茶殻は堆肥となり、また茶畑へ還っていきます。
最後まで自然の恵みを活かす、その循環の考え方に、コーヒーかすの再活用に取り組む私たちも深く惹かれました。

デザインのテーマは、「時間の地層」。
過去から受け継がれてきた手仕事。
今、この土地で大切に染められる手ぬぐい。
そして、これから誰かの日常の中で育っていく未来。
時間はただまっすぐ流れるものではなく、幾重にも積み重なって今をつくっている。
そんな思いが、この一枚には込められています。
美しさもまた、完成した瞬間だけにあるものではなく、手をかけ、使い続けることで宿っていく、特別な美しさがある。
この一枚も、皆さまの暮らしに寄り添いながら、少しずつ育ち、魅力を増していく。そんな存在になりますように。
お茶染めWashizu.
静岡を拠点に活動する、染色工房。代表の鷲巣恭一郎氏は、伝統的な染色技法「駿河和染」を受け継ぐ鷲巣染物店の五代目。2006年より、静岡の茶産業で生まれる未利用の茶葉を活用した「お茶染め」の研究を開始。伝統技術を現代のものづくりへと発展させながら、「お茶染めを文化に」を掲げ、持続可能な工芸のあり方を追求している。
ONLINE STORE
(販売は静岡歴史博物館店、オンラインストアにて)

長い追伸:
春夏秋冬の楽しみ方
手ぬぐいと聞くと、夏のものを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、昔の人にとって手ぬぐいは、一年を通して暮らしを支える身近な道具でした。
春 — 包む。
お弁当を包んで春のお出かけに。軽くてかさばらず、使い終わったら小さく畳んで持ち帰ることができます。新しい季節の贈り物を包むのにも◎
夏 — 拭く、かぶる。
汗を拭いたり、日差しを避けるために頭にかぶったり。古くから親しまれてきた、手ぬぐいの代表的な使い方です。薄手の木綿は乾きやすく、暑い季節にも重宝します。
秋 — 暮らしを整える。
台所で食器を拭いたり、かごに掛けたり。秋の実りを包んで持ち帰るのもいいかもしれません。日々の何気ない家事の中に、手仕事の美しさを取り入れて。
冬 — 覆う、守る。
意外かもしれませんが、手ぬぐいは冬にも活躍してきました。かつては「頬かむり」として頭や顔を覆い、寒さや風をしのぐためにも。
現代なら、冬の贈り物を包んだり。お気に入りの絵柄の手ぬぐいをそのまま飾ったり、かごや棚に掛けて、暮らしの中に季節の彩りを添えるのも素敵です。
厚手の布のように暖かさを保つものではありませんが、薄いからこそ、さまざまな使い方ができる。
季節が変われば、使い方も変わる。一枚の布を、そのときの暮らしに合わせて使い続ける。
そんな昔ながらの生活を豊かに彩る知恵を、改めて今の暮らしにも。




